50年前に知的障害をもつ二人の少女を、「私たちみんなでカバーしますから」という社員たちのたっての願いで採用した日本理化学工業。今、この会社の障害者雇用率は、社員の7割に及んでいます。会社は、売上を上げるために、利益を上げるために存在しているのではありません。本当に人々に必要とされ、社員たちも誇りをもって働くことができる、その結果、みんなが幸福を感じることができる、そんな会社になるために存在しているのです。
施設から一週間の就業体験にきた二人の少女は、就業開始が8時からなのに、雨の降る日も風の強い日も、毎朝7時には両親と先生と一緒に玄関に来ていた。仕事は簡単なラベル貼りだったが、10時の休み時間、お昼休み、3時の休み時間にも仕事に没頭して、手を休めようとしない。毎日背中を叩いて、「もう、お昼休みだよ」「もう今日は終わりだよ」と言われるまで一心不乱だった。就業体験の最終日、十数人の全社員が社長の大山さんのところへきて「二人を正社員にしてやってください」と談判する。
それ以来、障害者を少しずつ採用するようになっていきましたが、大山さんには、1つだけわからないことがありました。どう考えても、会社で毎日働くよりも施設でゆっくりのんびり暮らしたほうが幸せなのではないかと思えたのです。なかなか言うことを聞いてくれず、ミスをしたときなどに「施設に帰すよ」と言うと、泣きながらいやがる障害者の気持ちが、はじめはわからなかったのです。そんなとき、ある法事の席で一緒になった禅寺のお坊さんにその疑問を尋ねてみたそうです。するとお坊さんは、そんなことは当たり前でしょう。幸福とは、①人に愛されること、②人にほめられること、③人の役に立つこと、④人に必要とされることです。そのうちの②人にほめられること、③人の役に立つこと、そして④人に必要とされることは、施設では得られないでしょう。この3つの幸福は、働くことによって得られるのです。・・・それは目からウロコが落ちるような・・・大山さんは気付いたそうです・・・それなら、そういう場を提供することこそ、会社にできることなのではないか。企業の存在価値であり社会的使命なのではないかと・・・
(「日本でいちばん大切にしたい会社」 坂本光司著 あさ出版 1400円+税)
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